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顧客紹介価値(CRV)で変わる紹介キャンペーン戦略(第一回)

2025-10-28

第1回 なぜ「紹介価値(CRV)」を測るべきなのか?
~顧客の本当の価値を見抜く新しい視点~

はじめに

近年、企業のマーケティング環境は大きく変化しています。
GoogleやMeta(Facebook、Instagram)などの主要広告プラットフォームでは、クリック単価(CPC)や顧客獲得単価(CPA)が年々上昇し、同じ広告予算でも獲得できる顧客数が減少する傾向が顕著です。
特にCPCは業種によっては前年比で2桁%の上昇を示し、CPAも過去数年で1.5倍以上になっている市場もあります。
こうした状況では、「広告費を増やす」以外の顧客獲得手段を持たない企業は、利益率が急速に低下します。だからこそ、近年再注目されているのが紹介キャンペーン(リファラルマーケティング)です。
紹介キャンペーンとは、既存顧客が友人・知人・家族などに商品やサービスを薦め、その紹介を通じて新規顧客を獲得する仕組みです。
最大の魅力は、広告費を大幅に抑えながらも、高い質の新規顧客を獲得できることです。
紹介によって来た顧客は、初期から高い信頼感を持っており、購買意欲やロイヤルティが高い傾向があります。
しかし、現状の多くの企業では、紹介キャンペーンの対象を「売上上位の顧客」に限定しがちです。
一見すると合理的に見えますが、これでは効果を最大化できない場合があります。
この疑問に対し、Harvard Business Review論文「How Valuable Is Word of Mouth?」は、定量的なデータで答えを示しています。


第1章 研究の背景

従来、顧客の価値を測るためにはCLV(Customer Lifetime Value:顧客生涯価値)という指標が用いられてきました。
CLVは、ある顧客が将来もたらす利益の総額を現在価値で割り出し、そこからその顧客を獲得・維持するためのコストを差し引いたものです。
この指標はマーケティング予算配分の最適化や、ロイヤルカスタマーの特定に広く活用されています。
しかし、CLVには重大な限界があります。
それは「顧客が他者を紹介することによってもたらす価値」を考慮していないことです。
実際、紹介による新規顧客の獲得は、低コストで高い質を持つ顧客をもたらす重要な経路であり、その経済的価値は無視できません。
そこで筆者らは、新たにCRV(Customer Referral Value:顧客紹介価値)という指標を提案しました。
これは、顧客が紹介によってもたらす他者からの利益(+その獲得コスト削減分)を金額換算したものです。

CLVとCRVの違い

CLV:その顧客本人の購買による価値
CRV:その顧客が紹介した他者の購買による価値+獲得コスト削減分

重要なのは、高CLV顧客が必ずしも高CRVではないという点です。
よく買ってくれる顧客が必ずしも多くの紹介をしてくれるわけではない、という事実が、戦略の前提を変えます。

第2章 研究の目的と課題設定

本研究の目的は3つあります。


・紹介意向と実際の紹介行動の差(Doing-Saying Gap)を明らかにする
→ 「紹介します」と答えた人が実際に紹介する割合はどのくらいか?
・CLVとCRVの関係性を検証する
→ 高額購買顧客は本当に紹介力も高いのか?
・CLVとCRVを組み合わせた顧客分類の有効性を検証する
→ 両者を二軸で評価すればROI向上につながるのか?

筆者らの仮説は明確です。
「購買力と紹介力を二軸で評価することで、見落としていた高価値顧客を特定できる」

第3章 実験設計(詳細)

対象企業
通信会社:顧客9,900名
金融サービス会社:顧客6,700名
異なる業種で同様の分析を行うことで、結果の再現性と汎用性を確保しました。

調査手順

1.紹介意向の調査
顧客に「あなたは当社を他の人に薦めますか?」と質問し、紹介意向を取得。

2.紹介行動の追跡
1年間にわたり、誰が誰を紹介し、その紹介が成約に至ったかを記録。

3.紹介による利益の計測
紹介がなければ来なかった顧客(タイプ1)の利益をフル計上し、紹介がなくても来た可能性のある顧客(タイプ2)については獲得コスト削減分のみを計上。

4.CLVとCRVの算出
CLV:購買データから1年間の利益を予測し、マーケティングコストを差し引き、現在価値に割り引き。
CRV:紹介顧客の利益+獲得コスト削減額の合計。


💡 現代の実務での再現
クチコプレミアムのような紹介キャンペーン管理システムでは、顧客ごとに紹介コードや専用URLを発行し、紹介経路と成約データを自動で連携できます。
これにより、各顧客のCLVとCRVを定量化し、二軸での評価・分類が可能になります。

第1回まとめ

この論文の重要なメッセージは、「顧客価値は購買額だけでなく、紹介による利益も含めて測るべき」ということです。

次回は、この実験から明らかになったDoing-Saying Gapと、CLVとCRVを用いた顧客分類の詳細をお伝えします。

著者エリア

著者の紹介

廣見 剛利

20代の頃から、営業会社の組織を率いるかたわら、営業の重要性を認識しながらも、営業の限界について自問自答をし続ける。30代でCRMとSFAに出会いその限界を打破する光が見えつつも、変革しなければならないプロセスの多さに愕然とする。 40代に入りマーケティングオートメーションと出会い、見込み客獲得から、見込み客教育、商談化のプロセスの自動化について体現する。商談化前が自動化されることにより、商談後の生涯顧客価値を最大化させるプロセスの見える化、見える化による再現性のある営業組織づくりを実現。同じ悩みをもつ日本企業の解決策を提供すべく、マーケティングデザインを設立。



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