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顧客紹介価値(CRV)で変わる紹介キャンペーン戦略(第二回)

2025-11-18

第2回「紹介します!」を信じてはいけない理由
~意向と行動の差をデータで可視化し、本当に狙うべき顧客を特定~


はじめに

第1回では、Harvard Business Review論文「How Valuable Is Word of Mouth?」の背景と実験設計をご紹介しました。
今回は、その実験から得られたエビデンス(証拠データ)と、それを活用して作られた顧客分類モデルについて詳しく解説します。
特に注目すべきは、紹介意向(「紹介します」と答えた割合)と実際の紹介行動の差――いわゆるDoing-Saying Gapの大きさです。
この差は、多くのマーケティング施策の前提を揺るがすものでした。
さらに、購買価値(CLV)と紹介価値(CRV)の関係を明らかにし、両者を組み合わせた顧客分類モデルを紹介します。


第4章 Doing-Saying Gap(意向と行動の乖離)

1.調査概要
筆者らは、通信会社と金融サービス会社の顧客に対して次の2つを実施しました。

紹介意向の調査
「あなたは当社を他の人に薦めますか?」という質問に回答してもらう。
行動の追跡
その後1年間、実際に誰かを紹介したか、紹介が成約したか、そして利益を生んだかを記録。

2.結果

表1:紹介意向と行動の乖離(Doing-Saying Gap)

企業 紹介意向あり 実際に紹介した割合 成約率 利益発生率
金融サービス会社 68% 33% 14% 11%
通信会社 81% 30% 12% 8%

3.数字が示す意味
この表から見えてくるのは、意向と行動の間に存在する大きなギャップです。

意向から行動への転換率は半分以下
金融サービス会社では、68%が「紹介したい」と回答しましたが、実際に行動に移したのはその半分以下の33%。通信会社でも同様に、81%が意向を示したものの、行動したのは30%にとどまりました。

・成約率はさらに低下
行動に移した顧客の中でも、紹介が成約につながった割合は金融で14%、通信で12%。

・利益を生む紹介はさらに限定的
利益発生率(紹介によって利益が生まれた割合)は金融で11%、通信では8%。

つまり、意向を示した人のうち、本当に利益を生む紹介をしてくれるのは10人に1人程度です。

💡 実務での再現方法

紹介コード(紹介URL)と成約データを連携すれば、実際の紹介行動・成約率・利益額はリアルタイムで把握できます。
ただし、Doing-Saying Gapを測るには事前に紹介意向の調査データを取得することが不可欠です。
この2つを組み合わせることで、「意向は高いが行動しない層」「行動するが利益にならない層」を正確に特定し、的確なアプローチが可能になります。
クチコプレミアムのような仕組みを用いれば、この行動データの収集・可視化が自動化され、意向調査との統合分析も容易になります。


第5章 CLVとCRVの関係性

1.分析の狙い

顧客の購買価値(CLV)と紹介価値(CRV)がどの程度関連しているのかを調べました。
もし高CLV顧客が必ず高CRVであれば、購買額だけを見れば良いことになります。
しかし結果はそうではありませんでした。

2.分析結果
表2:顧客上位層比較(通信会社)

顧客順位 CLV(ドル) CRV(ドル)
1位 1,933 40
2位 1,067 52
3位 633 90
上位CRV顧客例 230 1,020


3.解釈

  • 高CLV顧客が必ずしも高CRVとは限らない。
  • 例えば、CLVが1,933ドルの顧客のCRVはわずか40ドル。
  • 一方で、CLVが230ドルと低くても、CRVが1,020ドルと非常に高い顧客も存在。

この結果は、「購買額が大きい顧客=紹介力が高い顧客」という単純な仮説を否定します。


第6章 顧客分類(Customer Value Matrix)

1.分類の方法
CLVとCRVを二軸に取り、顧客を4つのタイプに分類します。


表3:Customer Value Matrix(通信会社データ)

タイプ CLV(平均) CRV(平均) 割合 特徴
Champions $370 $590 21% 購買力・紹介力ともに高い
Affluents $1,219 $49 29% 購買力は高いが紹介しない
Advocates $180 $670 29% 紹介力は高いが購買が少ない
Misers $130 $64 21% 両方低い


2.
実務での活用
この分類を活用すると、例えば次のような戦略が立てられます。

Champions:現状維持+感謝施策
Affluents:紹介インセンティブ強化
Advocates:アップセル・クロスセル強化
Misers:購買・紹介の両面に働きかけ

CLVとCRVの両データを保持すれば、この分類を自動生成できます。

クチコプレミアムのようなシステムであれば、分類後の顧客リストに対して、セグメント別施策を自動配信できます。


第2回まとめ

今回の分析から得られたポイントは次の通りです。
・Doing-Saying Gapは大きく、意向データだけでは不十分。
・CLVとCRVは低相関で、両方の評価が必要。
・CLV×CRVの二軸分類で、ROIの高い施策対象を特定できる。

次回は、この分類を使って実施したセグメント別施策と、その効果(ROI最大15倍超)をご紹介します。

著者エリア

著者の紹介

廣見 剛利

20代の頃から、営業会社の組織を率いるかたわら、営業の重要性を認識しながらも、営業の限界について自問自答をし続ける。30代でCRMとSFAに出会いその限界を打破する光が見えつつも、変革しなければならないプロセスの多さに愕然とする。 40代に入りマーケティングオートメーションと出会い、見込み客獲得から、見込み客教育、商談化のプロセスの自動化について体現する。商談化前が自動化されることにより、商談後の生涯顧客価値を最大化させるプロセスの見える化、見える化による再現性のある営業組織づくりを実現。同じ悩みをもつ日本企業の解決策を提供すべく、マーケティングデザインを設立。



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