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顧客紹介価値(CRV)で変わる紹介キャンペーン戦略(第三回)

2025-11-18

第3回セグメント別施策でROIを15倍にした実証結果
~Champions・Affluents・Advocates・Misersへの最適アプローチ

はじめに

第1回では、顧客価値を購買額(CLV)と紹介価値(CRV)の両面で測定する必要性を明らかにしました。
第2回では、紹介意向と行動の差(Doing-Saying Gap)や、CLVとCRVの低い相関性、そして4つの顧客分類(Champions / Affluents / Advocates / Misers)について解説しました。
最終回の今回は、この顧客分類を使って各タイプに最適化した施策を実施し、その効果を数値で測定した実証結果を詳しく紹介します。

結論から言えば、このセグメント別施策は従来型の“一律施策”に比べて圧倒的なROIをもたらしました。
特に通信会社での検証ではROIが15.4倍、金融サービス会社でも13.6倍という結果が出ています。

第7章 タイプ別施策と成果

実施の背景

従来、企業のマーケティング施策は「全顧客に同じメッセージを送る」または「売上上位顧客に集中する」ことが多く、顧客の紹介力(CRV)を加味したアプローチはほとんど行われていませんでした。
本研究では、CLV×CRVの分類に基づき、伸ばすべき価値が異なる顧客群ごとに施策を設計しました。

Affluents(高CLV・低CRV)

課題
・購買力は高いが、紹介行動が少ない。
・紹介による新規獲得を増やす余地が大きい。

施策内容
・DM(ダイレクトメール)で紹介キャンペーンを案内
・紹介者・被紹介者双方に $10 のクレジットを付与
・「3〜4件の紹介で1か月無料」という具体的なメリットを提示

指標 施策前 施策後 増加 増加率
CRV平均 $49 $239 +$190 +388%
Champions移行率 4% +4%
CRV増加総額 $75,240

解釈

Affluentsは元々購買額が高く、CLVを維持しながらCRVを引き上げることができれば、ROIが大きく伸びます。今回の施策はCRVを約4倍に押し上げ、4%の顧客がChampionsに移行しました。

Advocates(低CLV・高CRV)

課題
・紹介力は高いが、自身の購買額は低い。
・既存サービスの利用拡大によってCLVを増やす必要がある。

施策内容
・クロスセル・アップセル提案
・バンドル商品(長距離通話+高速インターネット+追加回線など)を特別価格で提示
・1年契約で2か月分無料の割引特典

表2:Advocates施策の成果(通信会社)

指標 施策前 施策後 増加 増加率
CLV平均 $180 $290 +$110 +61%
Champions移行率 5% +5%
CLV増加総額 $54,450

解釈

Advocatesは紹介経由での貢献は大きいため、そのままでも価値はありますが、アップセルによって自身の購買額を伸ばすことで、総合価値をさらに押し上げることが可能です。

Misers(低CLV・低CRV)

課題
・購買力も紹介力も低い。
・どちらか一方でも伸ばせれば価値が増すが、優先度は低め。

施策内容
・クロスセル+紹介インセンティブの複合施策
・紹介者・被紹介者に$10クレジット付与
・「3〜4件の紹介で2か月無料」特典を追加

表3:Misers施策の成果(通信会社)

指標 施策前 施策後 増加 増加率
CLV平均 $130 $310 +$180 +138%
CRV平均 $64 $274 +$210 +328%
他セグメント移行率 12%
CLV増加総額 $71,280
CRV増加総額 $83,160


解釈

Misersは一見ROIの低い層ですが、購買と紹介の両面を同時に刺激することで、一定割合が他セグメントへ移行しました。

各セグメントにおける使用チャネルと特典設計

使用チャネルと移行効果

Affluents   :2回のDM送付 → 4%がChampions化
Advocates:2回DM+電話フォロー → 5%がChampions化
Misers       :2回DM+電話フォロー → 12%が上位セグメントへ移行(各4%ずつ)

特典施策と効果

Affluents特典:紹介者・被紹介者に各$10クレジット、3〜4件紹介で1か月無料 → 効果4%
Advocates特典:バンドル商品+1年契約で2か月無料 → 効果5%
Misers特典:複合特典($20クレジット+バンドル+2か月割引)→ 効果12%

解釈

論文は、セグメントに合わせた最適なチャネル選択と特典設計が移行効果を高める鍵であると結論付けています。
例えば、AffluentsはDMだけで十分効果が出る一方、Misersは複合的なチャネルと特典を組み合わせることで最大の移行率(12%)を達成しました。

第8章 ROIの総合結果

表4:通信会社のROI結果

項目
対象顧客数(Champions除く) 7,821名
施策コスト 約$31,500($4/人)
利益増加総額 $486,090
1人当たり利益増加額 $62
ROI 15.4倍

表5:金融サービス会社のROI結果

項目
ROI 13.6倍
備考 顧客層や商材は異なるが同様の傾向

解釈
セグメント別施策は、全顧客一律施策に比べてROIが2〜3倍高い。
特にAffluentsやAdvocatesは伸びしろが明確で、投資効果が読みやすい。

第9章 研究から得られる実務的示唆

1.CLV×CRVの二軸評価が必須
購買額だけでの評価は不十分。紹介力も考慮すべき。

2.施策はセグメント別に最適化
伸びしろのある指標を狙えばROIが最大化。

1.小規模テスト→全体展開
最初から全顧客に施策を打たず、小規模で検証して効果の高いものを拡大。

4.データ管理が鍵
CLV・CRVを同一基盤で管理する体制が不可欠。

第3回まとめ(総括と次の一手)

この研究が示したのは、「誰にどの施策を打つか」をデータで決めるべきということです。
購買力だけを見ていた時代から、紹介力も加味した戦略に進化することで、ROIは劇的に改善します。
実務では、
・行動データ(紹介コード経由の成約・利益)
・意向データ(紹介する意思)
を両方取得し、CLVとCRVを算出できる環境が必要です。

クチコプレミアムのようなツールを活用すれば、こうした計測・分類・施策配信が一気通貫で可能になり、論文の成果をそのまま再現できます。

著者エリア

著者の紹介

廣見 剛利

20代の頃から、営業会社の組織を率いるかたわら、営業の重要性を認識しながらも、営業の限界について自問自答をし続ける。30代でCRMとSFAに出会いその限界を打破する光が見えつつも、変革しなければならないプロセスの多さに愕然とする。 40代に入りマーケティングオートメーションと出会い、見込み客獲得から、見込み客教育、商談化のプロセスの自動化について体現する。商談化前が自動化されることにより、商談後の生涯顧客価値を最大化させるプロセスの見える化、見える化による再現性のある営業組織づくりを実現。同じ悩みをもつ日本企業の解決策を提供すべく、マーケティングデザインを設立。



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