リファラルマーケティング
ソーシャルメディア時代のリファラルマーケティング:クチコミを「追い風」に変える戦略的アプローチ
2026-01-27
イントロダクション
「紹介プログラム 比較」を検索しているあなたは、すでに気づいているかもしれません。顧客が顧客を連れてくるリファラルマーケティングは、単なる施策の一つではなく、持続的な成長エンジンになりうるということを。
しかし、多くの企業がリファラル施策を実施しても、期待したほどの成果が得られないのはなぜでしょうか? その答えは、「クチコミの動機」という根源的なメカニズムにあります。
本記事が取り上げる藤崎実氏の博士論文「ソーシャルメディア時代における『クチコミ』の動機と、創出・促進要因に関する研究」(立教大学大学院、2021年)は、この問いに学術的根拠をもって答えを示しています。マーケティング担当者や経営者が「リファラルマーケティング 効果」を最大化するために知っておくべき、実証に基づく知見が詰まった研究です。

なぜ今、クチコミ研究が重要なのか
現代のマーケティング環境は激変しています。Nielsen の調査によれば、消費者が最も信頼する情報源は「知人からの推奨」(83%)であり、「インターネット上の消費者の意見」(66%)、「テレビ広告」(63%)を大きく上回っています。
この数字が示すのは、マーケティングの主導権が企業から消費者へと移行したという現実です。もはや企業は一方的にメッセージを発信するだけでは不十分で、消費者自身が価値を発見し、それを他者に伝えたくなる仕組みを設計する必要があるのです。

「クチコミの嵐」を制御可能な「追い風」に変える
藤崎氏の研究の最大の価値は、コントロール不可能に見える「クチコミの嵐」を、戦略的に活用できる「追い風」に変えるフレームワークを提示している点です。
従来、クチコミは自然発生を待つものでした。しかし本研究は、企業が意図的にクチコミを創出し、促進できることを実証しています。そのカギとなるのが「同一化(Identification)」と「コミットメント(Commitment)」という心理メカニズムです。
この記事では、紹介施策の設計に悩むマーケティング担当者に向けて、学術研究が明らかにした実務的洞察を具体的に解説します。特に、顧客LTV 向上と継続的な推奨行動を実現するために、何をすべきかを明確にします。
論文の要約:わかりやすく、専門知識不要
研究の背景と目的
藤崎氏の研究は、二つの大きな問いから出発しています。
第一の問い:なぜ人はクチコミをするのか?
インターネット以前、クチコミは友人や家族との対面でのやりとりでした。しかしソーシャルメディアの登場により、見知らぬ他者とも情報を交換する時代になりました。2000年代初頭のクチコミ動機研究(Hennig-Thurau et al., 2004)以降、包括的な調査はほとんど行われていませんでした。
この空白を埋めるため、藤崎氏は2018年に1,000人の消費者を対象とした大規模調査を実施し、現代のクチコミ動機を解明しました。
第二の問い:企業はどうやってクチコミを創出できるのか?
単に「クチコミが発生すればいい」のではありません。企業がマーケティングに活用するには、以下の3つの条件を満たす必要があります:
1.継続性 – 一過性ではなく、長期的に発生すること
2.質の高さ – 実体験に基づく信頼できる内容であること
3.ある程度のコントロール可能性 – 企業が意図的に促進できること
この難題に対して、藤崎氏は「アンバサダー・プログラム」という実務的手法に着目し、その効果メカニズムを実証しました。

研究方法:二部構成のアプローチ
【第1部】消費者のクチコミ動機の解明(因子分析・重回帰分析)
1,000人の消費者調査データに対して統計分析を実施。ソーシャルメディア時代のクチコミ動機として、以下の3つの深層心理を特定しました:
1.社会への問題提起 (β=.270, p<.001) – 企業や社会に対する問題意識を公にすることで、解決を期待する動機
2.ネットコミュニケーションの楽しみ (β=.263, p<.001) – 他者と繋がり、会話すること自体の喜び
3.ネガティブな感情の発散/自己高揚 (β=.190, p<.01) – 不満の解消や、自分を価値ある消費者として肯定したい欲求

重要な発見として、従来重視されてきた「利他主義」(他の消費者への配慮)や「金銭的インセンティブ」の影響力は、統計的に有意ではありませんでした。つまり、「ポイントを付与すればクチコミが増える」という単純な施策は、もはや機能しないのです。

【第2部】企業によるクチコミ創出の仕組み(共分散構造分析)
アンバサダー・プログラム参加者を対象とした調査により、以下の因果関係を実証しました:
同一化(Identification)
→ ブランド・コミットメント(Brand Commitment)
→ 成果(クチコミ/推奨 & ブランド・ロイヤルティ/反復購入)
特に重要な発見は2つあります:
発見①:「ブランドとの同一化」が圧倒的に重要
・ブランドとの同一化 → コミットメント: β=.473 (p<.01)
・ブランド・コミュニティとの同一化 → コミットメント: β=.159 (p<.05)
ブランド自体との心理的な結びつきを強めることが、コミュニティとの同一化の約3倍も強力な効果を持つことが判明しました。

発見②:コミットメントが推奨と購買の両方を強力に牽引
・コミットメント → クチコミ/推奨: β=.863 (p<.01)
・コミットメント → ブランド・ロイヤルティ/反復購入: β=.785 (p<.01)
ブランドに対する深い心理的傾倒(コミットメント)を醸成できれば、質の高い推奨行動に直結することが証明されました。この効果量(β=.863)は、マーケティング研究において極めて強力な値です。

主要な発見:学術的貢献
藤崎氏の研究は、以下の3点で学術的に重要です:
・クチコミ動機の時代的変化を実証 – 2004年の先行研究と比較し、14年間の変化を定量的に示した
・「同一化→コミットメント→行動」の因果モデルを確立 – 企業が顧客のクチコミを創出する心理メカニズムを解明
・理論と実務の橋渡し – 社会的同一化理論をアンバサダー・プログラムという実務に応用
実務に使えるポイントを抽象化
この研究から導かれる実務的示唆は明確です:
✓ 顧客との関係構築は「満足度」だけでは不十分
→ ブランドの理念、未来のビジョンを共有し、顧客がブランドの一部であると感じられる体験を設計する
✓ 金銭的報酬に頼った施策は効果が薄い
→ 自己表現、社会貢献、コミュニティへの帰属といった深層心理に応える
✓ 一過性のキャンペーンではなく、継続的な関係性に投資
→ アンバサダー・プログラムのような長期的エンゲージメント施策が有効

研究が示す「紹介キャンペーン設計への示唆」
報酬設計の誤解:「大きければいい」わけではない
多くの企業が陥る罠は、「報酬額を上げればクチコミが増える」という短絡的な発想です。しかし藤崎氏の研究は、金銭的インセンティブの効果が統計的に有意ではなかったことを示しています。
これは2004年のHennig-Thurau et al.の研究でも「経済的インセンティブは主要因ではなかった」と指摘されていましたが、14年後の調査でも同様の結果が得られました。つまり、ポイントや報酬目当てのクチコミは、もはや消費者の行動を喚起しないのです。
なぜ金銭報酬が効かないのか?
情報過多の時代、消費者は「誰が言うか」を重視します。報酬目的で発信された情報は、受け手から信頼されません。また、モチベーション理論で知られる「内発的動機付け」の観点からも、外部報酬は本質的な動機を阻害することが知られています。
では、何が効果的なのか?
藤崎氏の研究が示すのは、以下のような「内発的動機」に訴えかける設計です:
・ブランドの理念や未来のビジョンへの共感
・自分がブランドの一部であるという帰属意識
・コミュニティメンバーとしての誇り
・自己表現や社会貢献の場としてのプログラム
報酬を完全に排除する必要はありませんが、それは「おまけ」であり、本質ではないということです。
ソーシャルネットワークの活用:eWOMと紹介の違い
藤崎氏の研究では、eWOM(electronic Word of Mouth:ネット上のクチコミ全般)と、企業が意図的に創出する「推奨」を区別しています。
eWOMの特徴:
・自然発生的で、コントロール不可能
・範囲が広く、検索可能で、永続的
・ポジティブにもネガティブにもなりうる
アンバサダー・プログラムによる推奨:
・ブランドとの同一化によって自発的に発生
・質が高く、信頼性が担保されている
重要なのは、後者の「戦略的クチコミ創出」です。単にSNS上で話題になることを期待するのではなく、ブランドに深く共感する顧客層を組織化し、彼らが自然に推奨したくなる環境を整えることが鍵です。

顧客の動機:利他性、自己表現、金銭的メリットの再考
利他性の限界
従来、「他の消費者への配慮」がクチコミの主要動機だと考えられてきました。しかし藤崎氏の調査では、利他主義は有意な影響を持ちませんでした。
これは、情報過多の時代において、消費者は「誰かが言うだろう」と考え、より個人的な動機で行動するようになったためと解釈されます。
自己表現と社会貢献
代わりに浮上したのが、「社会への問題提起」という動機です。企業や社会に対する問題意識を公にすることで解決を期待する、という積極的な姿勢がクチコミを動機づけています。
また、「ネガティブな感情の発散/自己高揚」も有意でした。不満の解消と同時に、自身の経験を語ることで「賢い消費者」として自己を肯定したいという欲求が働いています。
金銭的メリットの再評価
上述の通り、金銭的インセンティブは主要因ではありません。むしろ、ブランドの物語に自分が関与しているという「心理的報酬」の方が強力です。

顧客LTV 向上のメカニズム
藤崎氏の研究モデルでは、コミットメントが「クチコミ/推奨」と「ブランド・ロイヤルティ/反復購入」の両方に強い正の影響を与えることが示されました。
これは極めて重要です。
つまり、アンバサダー・プログラムに参加している顧客は:
1.質の高いクチコミを発信する (新規顧客獲得)
2.自分自身も繰り返し購入する (既存顧客のLTV向上)
という二重の価値を生み出すのです。
顧客獲得コスト(CAC)が高騰する中、一人の顧客が「布教者」と「ロイヤル顧客」を兼ねることは、企業にとって理想的な状態です。藤崎氏の研究は、この理想を実現するメカニズムを解明しています。
成果を最大化するために企業が何をすべきか
研究結果から導かれる実務的アクションは以下の通りです:
① ブランドの理念・ビジョンを明確にし、深く共有する
同一化を促すには、顧客がブランドの価値観に共感し、「自分もその一部だ」と感じることが不可欠です。単なる商品説明ではなく、ブランドが目指す未来、社会的意義を語りましょう。
② アンバサダー同士の交流を促進する
ブランド・コミュニティとの同一化も、コミットメントに正の影響を与えます。オンライン/オフラインのイベント、専用コミュニティサイト、限定コンテンツなどを通じて、アンバサダー同士の絆を深めることが重要です。
③ 体験を設計し、物語の一部にする
藤崎氏は、アンバサダーが「ブランドの物語の一部である」と感じられる体験設計の重要性を指摘しています。新商品の先行体験、開発プロセスへの関与、ブランドイベントへの招待など、特別な体験を提供しましょう。
④ 長期的視点で関係性に投資する
一過性のキャンペーンではなく、継続的なエンゲージメントを構築することが、持続可能なクチコミ創出の鍵です。短期的なROIにとらわれず、長期的な関係性構築に投資しましょう。

実務に落とし込む:より具体的なアクション
どういう業種に向いているか
藤崎氏の研究は特定業種に限定されていませんが、アンバサダー・プログラムが特に効果を発揮するのは以下のような特性を持つビジネスです:
✓ ブランド理念やストーリーが重要な業種
・ライフスタイルブランド、アパレル、コスメ
・サステナビリティや社会的価値を訴求する企業
✓ コミュニティ形成が自然に起こりやすい業種
・フィットネス、スポーツ用品
・趣味性の高い商品(カメラ、アウトドア、ゲーム)
✓ 体験や使用感の共有が購買決定に影響する業種
・食品・飲料(特にプレミアム商品)
・BtoB SaaS(導入事例の共有)
✓ リピート購入が前提のビジネス
・サブスクリプションサービス
・消耗品・日用品
どういう顧客属性に効くか
アンバサダー・プログラムに適した顧客像:
① ブランドへのエンゲージメントが既に高い顧客
当然ですが、既にブランドを好きな人が対象です。しかし「好き」だけでは不十分で、「ブランドの理念に共感している」ことが重要です。
② 自己表現欲求が強い顧客
SNSで積極的に発信する、コミュニティで意見を述べる、といった行動パターンを持つ顧客は、アンバサダーとして活躍しやすい傾向があります。
③ 社会貢献意識を持つ顧客
藤崎氏の研究で明らかになった「社会への問題提起」動機を持つ顧客は、ブランドの社会的価値を他者に伝えることに意義を感じます。
④ コミュニティへの帰属欲求が強い顧客
同じ価値観を持つ仲間との繋がりを求める顧客は、ブランド・コミュニティに深くコミットしやすい特性があります。
成果を出す企業の共通点
実務において、アンバサダー・プログラムで成果を出している企業には以下の共通点があります:
✓ 経営レベルでコミットしている
トップダウンでブランド理念を浸透させ、アンバサダーとの関係構築を事業戦略の中核に位置づけている。
✓ 「量」より「質」を重視
何千人ものアンバサダーを集めるのではなく、本当にブランドを愛する数百人と深い関係を築くことを優先している。
✓ 双方向コミュニケーションを実現
企業からの一方的な情報発信ではなく、アンバサダーの声を聞き、製品開発やマーケティングに反映させている。
✓ 長期的視点で運営
短期的な売上やクチコミ数にこだわらず、3年、5年という長期スパンで関係性を育てている。
逆に失敗するケース
逆に、以下のような運営は失敗しやすい傾向があります:
✗ 報酬目的の参加者を集めてしまう
金銭的インセンティブを前面に出すと、ブランドへの共感ではなく報酬目的の参加者が集まり、質の低いクチコミしか生まれません。
✗ 一過性のキャンペーンとして実施
短期間で成果を求めると、関係性が育たず、コミットメントも生まれません。
✗ 企業の都合を押し付ける
アンバサダーを「無料の広告塔」として扱うと、彼らの自発性が失われ、プログラムが形骸化します。
✗ コミュニティ運営をおろそかにする
アンバサダー同士の交流機会を設けず、企業と個人の一対一関係だけでは、コミュニティとの同一化が生まれません。
ROI を高めるためのチェックポイント
アンバサダー・プログラムの投資対効果を高めるために、以下の点をチェックしましょう:
□ ブランド理念が明確で、社内外に浸透しているか?
同一化を促すには、まず「何と同一化するのか」が明確である必要があります。
□ 参加者の選定基準が適切か?
既存顧客の中から、ブランドへの共感度やエンゲージメントの高さで選んでいますか?
□ 体験設計がアンバサダーの自己実現につながっているか?
彼らにとって「誇りに思える」「成長を感じられる」体験を提供できていますか?
□ コミットメントを測定し、追跡しているか?
NPS(ネット・プロモーター・スコア)だけでなく、ブランド・コミットメント尺度を用いた測定を検討しましょう。
□ 長期的視点で評価しているか?
四半期ごとのクチコミ数ではなく、年単位でのLTV向上、CAC削減、ブランドエクイティ向上を指標にしていますか?
他の研究との比較
類似研究との一致点
藤崎氏の研究は、以下の先行研究と整合性を持ちます:
Hennig-Thurau et al.(2004)の包括的クチコミ動機研究
14年前の調査でも、経済的インセンティブや利他主義の影響力が限定的であることが示されていました。藤崎氏の研究は、この傾向が継続していることを再確認しました。
ブランド・コミュニティ研究(Muniz & O’Guinn, 2001; McAlexander et al., 2002)
ブランド・コミュニティにおける同一化がメンバーのロイヤルティやクチコミに影響することは、先行研究でも指摘されていました。藤崎氏の貢献は、これを実務的なアンバサダー・プログラムの文脈で実証した点にあります。
社会的同一化理論(Tajfel & Turner, 1979; Ashforth & Mael, 1989)
組織心理学の分野で確立されていた「同一化→コミットメント→行動」のメカニズムを、消費者行動とクチコミ創出に応用した点が新しい貢献です。
異なる知見
一方で、以下の点で新しい知見を提示しています:
eWOMと戦略的推奨の区別
多くのクチコミ研究は、自然発生的なeWOMに焦点を当てていました。藤崎氏は、企業が意図的に創出する「戦略的クチコミ」のメカニズムを解明した点で独自性があります。
「ブランドとの同一化」の圧倒的重要性
コミュニティとの同一化よりも、ブランド自体との同一化が約3倍強力であることを定量的に示した点は、実務的に極めて重要な発見です。
ソーシャルメディア時代の動機変化
「社会への問題提起」「ネガティブ感情の発散/自己高揚」といった現代特有の動機を特定し、2004年時点との変化を実証した点が新しい貢献です。
論文の位置づけ
藤崎氏の研究は、以下の点でクチコミ研究の系譜において重要な位置を占めます:
・理論と実務の架橋 – 社会心理学の理論を実務的なマーケティング施策に応用
・時系列比較 – 14年間の環境変化を踏まえた動機の再検証
・包括的アプローチ – 消費者動機と企業戦略の両面を扱った二部構成
メタ分析の観点からは、本研究はブランド・リレーションシップ研究とクチコミ研究を統合し、「持続可能なクチコミ創出」という新しい研究領域を切り開いたと評価できます。
まとめ
対象論文が紹介施策のどの設計要素に影響を与えるか
藤崎氏の研究から、紹介プログラムを設計する際に特に重視すべき要素が明らかになりました。ポイントは、施策を「短期の拡散装置」ではなく、「関係性を育てる仕組み」として捉えることです。
① プログラムの目的設定
単なるクチコミ数の増加ではなく、「ブランド・コミットメントの醸成」を主要目的に据える
② 参加者の選定基準
新規参加者の数よりも、ブランドへの共感度・既存エンゲージメントの高さを重視する
③ 報酬設計
金銭的インセンティブに依存せず、心理的報酬(帰属感・自己実現・社会貢献)を中心に設計する
④ 体験設計
・ブランドとの同一化を深める:理念共有、ストーリーへの関与、特別感の演出
・コミュニティとの同一化を促す:メンバー間交流、イベント、限定コンテンツ
⑤ 期間設定
短期キャンペーンではなく、長期的・継続的な関係性構築を前提にする
⑥ 成果指標(KPI)
クチコミ数だけでなく、ブランド・コミットメント、ロイヤルティ、LTVといった質的指標を測定する
企業が今すぐ活かせる3つのポイント
ポイント①:ブランドの「Why(なぜ存在するのか)」を明確にする
サイモン・シネックの「ゴールデンサークル」理論で知られるように、人は「What(何を売るか)」ではなく「Why(なぜそれをするのか)」に共感します。自社ブランドの存在意義、社会的価値を明文化し、社内外に発信しましょう。
ポイント②:既存顧客の中から「真のファン」を特定する
購買履歴、NPS、SNS上での言及、問い合わせ内容などから、ブランドへの共感度が高い顧客を抽出します。彼らに個別にアプローチし、アンバサダープログラムへの参加を打診します。量より質を重視することが成功の鍵です。
ポイント③:小さく始めて、長く続ける
最初から大規模なプログラムを構築する必要はありません。10-20人の熱量の高い顧客から始め、彼らとの関係を深めながら徐々に拡大していきましょう。重要なのは継続性です。

将来のマーケティングへの示唆
藤崎氏の研究が示唆する未来のマーケティングは、以下のような方向性です:
「コントロール」から「共創」へ
企業が一方的にメッセージをコントロールする時代は終わりました。顧客と共にブランドの物語を紡ぎ、彼らが主体的に価値を発信したくなる環境を整えることが求められます。
「トランザクション」から「リレーションシップ」へ
単発の取引を繰り返すのではなく、長期的な関係性に投資することが、持続的な成長の源泉となります。顧客LTV 向上は、関係性の深さに比例します。
「マス」から「コミュニティ」へ
不特定多数へのマスマーケティングではなく、共通の価値観で結ばれたコミュニティを育て、そのコミュニティが自然と拡大していく仕組みを作ることが重要です。
「量的KPI」から「質的KPI」へ
フォロワー数やインプレッション数といった量的指標だけでなく、ブランド・コミットメント、エンゲージメントの深さ、推奨の質といった質的指標を重視する必要があります
FAQ(schema.org最適化)
Q1: 紹介プログラムはどれくらいのCVR(コンバージョン率)が期待できる?
A: 紹介プログラムのCVRは、一般的な広告と比較して5-25倍高いとされています(出典:Wharton School調査)。藤崎氏の研究が示すように、ブランド・コミットメントの高いアンバサダーによる推奨は、信頼性が極めて高く、受け手の購買意思決定に強い影響を与えます。
ただし、CVRは業種、商品単価、プログラム設計によって大きく異なります。BtoB SaaSでは10-30%、消費財では1-5%程度が目安です。重要なのは、獲得した顧客のLTVも通常より20-30%高い傾向がある点です(出典:Deloitte調査)。
Q2: 顧客LTV 向上にどれほど寄与する?
A: 藤崎氏の研究では、ブランド・コミットメントが反復購入(ブランド・ロイヤルティ)に強い正の影響(β=.785)を与えることが実証されました。
実務データでは、アンバサダープログラム参加者のLTVは非参加者と比較して平均で2-4倍高いという報告があります。これは、彼ら自身の購買頻度・単価が上がるだけでなく、紹介による新規顧客獲得も寄与するためです。
特に注目すべきは、アンバサダーが紹介した顧客も高いLTVを示す傾向がある点です。同じ価値観を共有する顧客同士は、ブランドへのコミットメントが伝播しやすいのです。
Q3: 報酬額は高いほうがいいのか?
A: いいえ。藤崎氏の研究では、金銭的インセンティブがクチコミ動機として統計的に有意ではありませんでした。これは2004年の先行研究(Hennig-Thurau et al.)とも一致しています。
報酬額を上げると、一時的にクチコミ数は増えるかもしれませんが、「報酬目的」の参加者が集まり、クチコミの質が低下します。受け手も「お金のために言っている」と認識し、信頼性が損なわれます。
効果的なのは、金銭報酬を主目的にせず、以下のような「心理的報酬」を重視することです:
・ブランドストーリーへの関与(限定イベント、先行体験)
・コミュニティへの帰属感(特別なメンバーシップ)
・自己実現(専門知識の共有、影響力の実感)
・社会貢献(ブランドの社会的価値の拡散)
金銭報酬は「おまけ」程度に留め、本質的価値を訴求しましょう。
Q4: B2Bでも効果はある?
A: はい、B2Bこそアンバサダープログラムが効果的です。藤崎氏の研究は特定業種に限定されていませんが、B2B環境では以下の理由で特に有効性が高まります:
① 購買決定プロセスが複雑で、信頼が重要
B2Bの購買は高額かつ長期的影響を持つため、既存顧客の推奨(リファレンス)が決定的に重要です。
② ニッチ市場でコミュニティ形成しやすい
同じ業界・職種の顧客同士は共通の課題を持ち、コミュニティとの同一化が起こりやすい。
③ LTVが非常に高い
B2B SaaSなどでは一顧客のLTVが数百万円〜数千万円に達することも珍しくなく、質の高い紹介一件の価値が極めて大きい。
実際、Salesforce、HubSpot、Slackなどのトップ企業は、カスタマーアドボカシープログラムを戦略の中核に据えています。
Q5: eWOMと紹介の違いを研究ではどう定義しているか?
A: 藤崎氏の研究では、以下のように明確に区別しています:
eWOM (electronic Word of Mouth)
・自然発生的なネット上のクチコミ全般
・企業の意図とは無関係に発生
・ポジティブ・ネガティブ両方を含む
・コントロール不可能(「クチコミの嵐」)
企業が創出する推奨(アンバサダー・プログラム経由)
・企業が戦略的に設計した仕組みから発生
・ブランドとの同一化に基づく自発的な推奨
・基本的にポジティブ(ただし押し付けではない)
・ある程度コントロール可能(「持続可能な成長エンジン」)
重要なのは、後者も「自発的」である点です。企業が無理やり言わせるのではなく、同一化とコミットメントによって「自然に推奨したくなる」心理状態を創り出すのです。
これが、報酬目的の投稿やインフルエンサーマーケティングとは根本的に異なる点です。
参考文献
・藤崎実(2021)『ソーシャルメディア時代における「クチコミ」の動機と、創出・促進要因に関する研究』立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 博士学位論文
・Hennig-Thurau, T., Gwinner, K. P., Walsh, G., & Gremler, D. D.(2004)”Electronic word-of-mouth via consumer-opinion platforms: What motivates consumers to articulate themselves on the Internet?” Journal of Interactive Marketing, 18(1), 38-52
・Muniz, A. M., & O’Guinn, T. C.(2001)”Brand community” Journal of Consumer Research, 27(4), 412-432
・Nielsen(2015)『広告信頼度 グローバル調査2015』
・WOMMA(2007)”WOM Marketing Definition”
最終更新:2024年
本記事は学術研究に基づく情報提供を目的としており、特定のサービスや企業を推奨するものではありません。
